PROJECT

健康住宅の家具
2021.8.3〜2021.8.30

湯浅則夫written by Yuasa

健康住宅を作る設計事務所からの依頼で、シックハウスやアレルギーに配慮した住宅に合う家具を製作しました。

条件はまず天然木であること。
合板や集成材に使用される接着剤や溶剤などの化学物質を出来るだけなくしたいとのことで、塗料や接着剤も自然由来にこだわるそうです。

まずは接着剤づくりから

塗料や接着剤も自然由来で、ということで
接着剤にこの餅粉を練って使うことになりました。

寒梅粉という餅米の粉を練る。

これは寒梅粉といって、餅米の粉です。
100%餅米からできていて、通常食用として使われるものらしいです。

僕も訓練校では、昔はそうだった、と教えていたものの、実際に使ったことはなく、接着力や耐久性はわかりません。
実験してみたところ、確かに接着はでき、そこそこの接着力はあるものの、どう考えても湿気や熱に弱そうで、過度の乾燥にも弱そうです。
正直、家具に使って良いのかわかりません。

そこそこの接着力はあるものの正直家具に使ってよいものかわからない

しかし、化学物質にアレルギーのある人(子どもを持つ親御さん)にとって、家や家具にこだわりたくても選択肢がないのです。
もしこの方法が、PROPの家具作りとしてなんらかの答えだと言えるなら、僕らにとっても意味のある出発点になる気がします。

そうですね、例えば、
うちの家具はちゃんと壊れます。
でもちゃんと直せます。
そう言った知り合いの木工家の言葉を思い出しました。

健康住宅に納まるのを待つ家具たち


積み上げると高さが2540mmになる収納家具。
真ん中がテレビ、その上が天井まである本棚、テレビの下はCD、DVDがどっさり入る引き出しです。
もちろん無垢材で作り、接着剤は餅のり。無塗装。

こういう作り方は初めてなのですが、冬に木が収縮した時に接合部がどうなるのか、無塗装ですから変形はより顕著だと思います。
無垢家具製作の経験から想定した作り方をしているとはいえ、半年後にどうなるのかも見守らなければ。
そんなアフター込みのお仕事ですね。

そして、納品!

健康住宅対応の家具一式を納品してきました。

永田さんと2人でマンションの2階へ汗だくになりながら担ぎ上げ、現場で調整しながら設置。
高さ2.5mやら長さ3mやら、基本的に工場で組み立てて納品する無垢の家具の搬入は力仕事です。

設置、取り付け、現場での調整、トラブルの対応力は技術ではなく技能

 


そう言えば、こういった授業を訓練校ではしなかったな、と思います。
家具屋の仕事は作るだけではなく、最終お客さんの家に納品しなくてはなりません。
作る家具が階段を登れるのか、入り口を通れるか、家の中で立てたり倒したり回転できるのか。
そもそもその重さは持てるのか。

新築であれば家具の搬入はいろんな業者の最後の方になります。
壁や床が仕上がった後、たった一脚の椅子をどこにもぶつけずに、狭いマンションの廊下を通って、幅ギリギリのドアを抜けてダイニングまで運ぶことにもノウハウがあります。
設置、取り付け、現場での調整、トラブルの対応力は技術ではなく技能なんですよね。